自動車業界がいつも黒字であり続けるとは限らないから、不況になった時には、レイオフによる一時休業の制度があり、その間一時休業した組合員には、手厚い休業補償(ほぼ9割に近いといわれる)が与えられる。
そして、一時休業やレイオフされた租合員が職場復帰したり、会社を辞めたりして空席になった職場の補充がなされる時は、先任権のある勤続の長い古い組合員が優先される。
これを先任権制というが、この制度は、見方によっては田本の年功序列の労使慣行と似かよったところがあるともいわれる。
このバーゲニングの労使関係は、組合側だけが推進したのではなく、経営側にも責任がある。
GMの経営者は、労使協力とか協調というのは双方の立場が違う以上絵空事であり、バーゲニングで事を処理する方が楽であり、すべてをかけ引きで決着するのが労使交渉のあるべき姿だと考えた。
だから、バーゲニングの労使関係には労使がともに責任があるといわねばならない。
その結果、どういうことが起こったかというと、従業員数が20年間で3分の1に減り、そのためにUAWの組合員数は150万人から43万人に減り、それにもかかわらず、残った組合員の賃金水準はアメリカで最高水準に近いものを維持し、退職者が増えるにつれて既得権である年金などのレガシーコストも年々増え続けることになったのである。
こうして退職者が増え続けた中、他方で新規採用は減らしてきたから、工場現場の技能伝承や現場の生産システム改革の担い手となるべき若年労働者の比率が低下し、工場の平均年齢の高齢化が避けられなくなってしまった。
このようなバーゲニングの労使交渉は、長年にわたり維持され、経営側もこれを容認し自動車工場で何があったのが?ただけでなく、例えば90年代に未曽有の高利益を上げた時には、貸金も年金も大盤振る舞いをやっている。
これを放置し、容認してきた経営者側にも責任がある。
要するにバーゲニングの労使関係は、とうに時代遅れのものとなり、破綻に瀕していたのに、これをいつまでも続けた結果、GM自体が破綻してしまったといってよいだろう。
マスプロ工場VSジャストインタイム生産方式それでは、自動車工場の現場で何が起こっていたのだろうか。
この点ではアメリカの自動車工場と日本の自動車工場の間にその生産管理、ひらたくいうと、物作りのあり方をめぐって大きなコントラストが見受けられる。
まずアメリカの自動車工場は、人減らしを進めた分をロボットによる自動化や設備の近代化で補ってきた。
設備水準では日本に劣らないのだが、基本的な工場の生産システムのあり方がマスプロかつハイボリュームで生産し、柔軟性に欠けるやり方で運営されている。
これはヘンリーフォード以来の大量生産の流れ作業に加え、作業工程の極端な分業による細分化を続ける運営の仕方で、見込み大量生産を続けることにもなる。
見込み生産だから生産ラインを止めず、大量に作って1台当たりの見かけの生産コストを下げるやり方である。
このやり方だと、生産する車がよく売れている時なら、作れば作るほど効果は上がり、1台当たりのコストは下がるからよいのだが、もしその事が売れなくなると、在庫が増えるためにかえってコスト高になってしまう。
だが、いったんマスプロ工場を作ってしまうと、どうしても需要変動に合わせて生産することが難しくなるので、少なくとも一定の稼働率(生産能力に対する時間当たりの生産台数)は維持しなければならないから、例えば80%なら80%の稼働率を維持するために、無理をしてでも生産していくことになってしまう。
だから、作り過ぎの無駄が生じるが、それを何とかはかせるために、ひとつには車がディーラーに渡るまでの流通期間を長くして流通在庫を増やし、ディーラーの手持ち在庫を増やすやり方が取られた。
時にはディーラーにたくさんの在庫を押し込んで、その負担はインセンティヴ(奨励金)やリベート(割り戻し、時には値引き)でカバーし、何とか生産ラインの稼働率を維持しょうとしたのである。
このような生産システムは、GMだけでのものではない。
アメリカの他の2つの自動車メーカーにも共通するものだが、GMの場合、たくさんのブランドの車を40もの工場で作っていたから、見込み大量生産による作り溜めの傾向は一番強く、流通在庫やディーラー在庫だけでなく、工場内の工程在庫も最も多い体質となっていた。
また、この生産システムのもうひとつの欠陥は、生産のフレキシビリティがないことで自動車工場で何があったのが?ある。
これはとくに市場の需要変動、とくに量的変動だけでなく、草のバリエーションやひとつのラインで生産する車種の構成の入れ換え、モデルチェンジの立ち上げの早さといった、少しでも速く工場が対応するという意味でのフレキシブルなシステムではないという点に現われている。
このようなマスプロハイボリューム工場の温存は、経営側の判断でそうなっただけでなく、ここにも労働問題がからんでいる。
つまり、長い自動車工場の労働慣行の歴史的経緯の中で、アメリカの自動車工場の生産ラインは日本の数倍と長くなり、それでいて工程は細分化され、単純な繰り返し作業が多いものとなっている。
そして、UAWとの労働協約では、複雑な職務分類(ジョブクラシフィケーション)と、それによる単能工的作業が前提となったワークルール(作業内容と手順を細かく決めるルールのこと)が決められていて、これを変えることは容易ではない。
なぜならワークルールの変更は、多能工の活用や複雑な職務構造の統合を意味し、今までのようなたくさんの人月が不要になることに通じ、UAWが一番嫌う雇用問題に手をつけることになるからである。
そんなわけで、工場の改革が必要なことは充分認識されていながら、工場のマスプロハイボリューム体質からの脱却と、フレキシブル化は実現しなかった。
これに比べて日本の自動車メーカーの工場では、ジャストインタイム生産方式が長年にβ0わたって追求され、極力作りだめを排し、在庫も少なくし、工場のフレキシブル化が追求されてきた。
ジャストインタイム生産方式とは、いうまでもなく必要なモノを必要なだけ必要な時に生産する生産方式で、できるだけ売れる分だけを作って、作り溜めを極力少なくし、そのために後工程が前工程から必要な分だけしか引き取らず、前工程が押し出しで作るのを止めてプール生産に徹するやり方である。
この方式が徹底すると、工程内の不必要な在庫は結果的に排除されていく。
そしてこのジャストインタイムの生産方式は、自動車メーカーだけでなくサプライヤーにも徹底され、カンパン納入で所要工程に部品が必要な時に必要なだけ納入されることになり、部品の不必要な在庫はなくなる。
このジャストインタイムの生産方式は、ヘンリーフォードがハイランドパーク工場で行なったライン同期化実験の時のライン同期化、つまり生産ライン内の工程ごとの作業のムラやデコボコをなくすため、作業の進め方を一定の速さで秩序正しく進めるやり方を創造的に発展させたものである。
フォードは、初めからいきなりコンベアー方式による移動組立システムで大量生産を導入したのではなく、ライン同期化をやってから、モデルT型を増産するために大量生産にもっていき、それが今日まで、アメリカの自動車工場で温存さ自動車工場で何があったのが?カンパン方式は再び世界の救世主になれるが?これに対して、トヨタに代表される日本の自動車メーカーは、とくに戦後に乗用車の生産を始めた時、資金がなかったから、限られた設備でこれを有効に活用しつつ生産を増やし車種も増やしたので、現場での人間の技能と知恵に頼るしかなかった。
引っ越しの言葉があり、この引っ越しがどこに入るのかでかなり悩んでいるようでした。
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